インボイス制度への反対意見の疑問点

適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度が2023年から始まります。
これにより、それまで免税事業者(主に課税売上高が1,000万円以下の事業者)に対する支払いでも認められていた仕入税額控除が段階的に縮小され、最終的にはゼロになります(課税事業者も登録が必要です)。
それだけ見れば「免税事業者が懐に入れていた益税を、その取引相手の課税事業者が肩代わりするようになる」図式ですが、課税事業者は消費税の負担が増えるので免税事業者との取引は敬遠するか、値切るようになる可能性が指摘されています。
この「免税事業者との取引は敬遠するか、値切るようになる」ことなどを批判する人がいますが、疑問点があるのでまとめてみたいと思います。

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消費税について

事業者の場合、そもそも消費税は預かり金

消費税の負担者は最終消費者で、事業者が受け取った消費税は預かり金です。そこから仕入れなどの際に支払った消費税を差し引くのが「仕入税額控除」で、その差額を納めます。
ですが、課税売上高が1,000万円以下の事業者は預かった消費税を納めなくてもいいことになっており、これが益税として当初から問題視されています。

インボイス方式導入による益税の抑制-免税事業者への影響と今後の消費税の公平性確保に向けて
益税とは、消費者が事業者に支払った消費税の一部が、納税されずに事業者の利益となってしまうことを指す。通常、消費税率引き上げ、軽減税率の導入は、益税を増加させるが、今回の消費税率10%への引き上げでは、2023年10...

益税とは、消費者が事業者に支払った消費税の一部が、納税されずに事業者の利益となってしまうことを指す。消費者が負担する税が行政に納められず、特定の企業(あるいは個人)の利益となってしまうことから、税の公平性という原則に照らし合わせ適切ではない。過去の研究では、益税額は約5,000億円(2005年、消費税率5%時点)とする推計もあり、消費税収の5%にも及ぶ1。

「益税額は約5,000億円(2005年、消費税率5%時点)とする推計」もあるとのことで、現在は10%なので1兆円ぐらいになっているかもしれません。この益税を解消するのがインボイスです。

仕入税額控除

上でも軽く触れましたが、事業者が実際に納める消費税額は、「受け取った消費税額から仕入れ等で払った消費税額の差」です。
例えば売上が110万円(消費税は10万円)、仕入れが33万円(消費税は3万円)とすると、差額の7万円が納める額ということになります。
ですが、これを適用するためには請求書等を保存して、消費税額もきちんと分けて入力して税額を把握できるようにするなど事務負担が大きくなりそうです。

簡易課税制度

課税事業者になった場合、「簡易課税制度」というものが存在します。これまた益税を生む余地のある制度ですが、売上が5千万円以下の場合、業種によって40~90%を仕入れと見なして控除できるという制度ですね。先ほどの「110万円(消費税は10万円)、仕入れが33万円(消費税は3万円)」の例では、業種によっては90%控除されて納めるのは1万円でいい、ということになります。
現在免税事業者であれば、この制度を利用すればそれほど事務負担が増えるということはなさそうに思います。

インボイスで免税事業者は廃業の危機…!消費税負担か値引きを迫られる! | 全国商工団体連合会
インボイスで免税事業者は廃業の危機…!消費税負担か値引きを迫られる!教えて湖東先生!2023年10月実施予定「消費税インボイス制度」全国商工新聞 第3460号2021年5月31日付 小規模事業者の事業継続に重大な影

Q7:簡易課税制度はなくなるの?
A:廃止か、適用範囲を縮小する方向

 簡易課税制度は、消費税の納税計算を簡単にする目的で、2年前の売り上げが5千万円以下の中小事業者に認められています。業種によって40~90%を仕入れとみなして控除します。簡易課税は、消費税の納税事業者の約4割、120万人が選択しています。
 インボイス方式を導入し厳格な適格請求書でやり取りしても、120万事業者は適用されないのです。だから、「簡易課税制度はインボイス制度の障害になる」との理由で、フランスのように廃止するか、存続させても、ドイツのように適用範囲を大幅に縮小する方向で検討されています。

ですが、今後は「廃止か、適用範囲を縮小する方向」とのことです。まあ、これも「益税の温床」にはなるので当然といえば当然ですね。

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批判の疑問点

ようやく本題の「批判」について、見ていきたいと思います。

インボイス制度でめんどくさい事務をやった上で収入の10%を奪われる

消費税が5%に下がるか、インボイス制度でめんどくさい事務をやった上で収入の10%を奪われるかを選択する選挙です。

「消費税の税率」は日本で暮らす人全員に関係するのに対して、「インボイス制度でめんどくさい事務をやった上で収入の10%を奪われる」というのは免税事業者に限ったものなのでこれを並べるのはどうかとも思いますがそれは置いときます。また、「収入の10%(10分の1)」ではなく「収入の約9%(11分の1)」だと思いますがそれも本質ではないので置いといて、本当に「インボイス制度でめんどくさい事務をやった上で収入の10%を奪われる」のでしょうか?
ここで「めんどくさい事務」というのは「請求書等の保存、消費税額等の入力」と思われますが、それをするのは仕入税額控除のためです。仕入税額控除をすれば「収入の約9%(11分の1)」をそっくりそのまま納税することはなく、現在免税事業者なら簡易課税制度も選べます。そうすればそれほど面倒な事務作業もなく納税額を減らせるので、「めんどくさい事務をやった上で収入の10%を奪われる」ということはないのではないでしょうか?
無知なのかだまそうとしているのかはわかりませんが、間違った主張だと思います。
そもそも「事業者の金」ではなく「消費者からの預かり金」なわけで、それを益税として懐に入れていたのをきちんと納めるようにするのに対してなぜこのように反対するのか理解できません。下請けで弱い立場だから交渉力がなく、「免税事業者だから」とその分安くさせられたなどあれば、価格がそのままだと消費税分を下請け側で負担しなければいけなくなるので問題でしょうが、それは当事者で解決するしかないんじゃないですかね。

消費税は逆進性が強いから緩和する措置が必要

1989年の消費税導入当初、売上げ3000万円以下は免税だった理由は逆進性が強いことに対する反発を抑えるため。こうでもしないと導入できなかった(たとえ3%でも)。

消費税は逆進性が強く当初は三千万以下は免除としたがそれが一千万以上となり今度は一千万円以下も。
結局全員から取り立てる。どうなんだろうね?

消費税(当時は大型間接税だった)が決まったとき、「間接税は逆進性が大きくて、それを緩和する措置を用意しないと導入すら難しい」という認識だったのも、すでに昔ということなんだろうなあ。

いずれも消費税導入当時の話を持ち出し、「免税は逆進性の緩和、もしくは逆進性に対する反発を抑えるため」という主張。ですが、「消費税の逆進性」というのは最終消費者の所得に対するものであり、事業者は関係ないのでは? 僕は当時小学生なのでどういう議論があったかは記憶していませんが、「逆進性の緩和」が必要なら給与所得者や年金のみで生活する人に対する措置も必要だと思いますがそれはないのでしょうか? 「売上が一定水準以下の事業者に対してのみ逆進性の緩和措置を講ずる」というのはあまりに不均衡で、本当に当時そういう説明がされていたなら、あなた方みんなうその説明をされて「逆進性の緩和にはならない」ことを見抜けなかっただけでは?としか思えません。
また、事業者が自分たちの利益から消費税を出しているわけではなく、そもそも客からの預かり金なわけで、何が「逆進性の緩和」になるのかわかりません。消費税に関する事業者の負担は事務作業ぐらいのはずなので。

消費税がなくなる=収入10%アップ

消費税がなくなる=収入10%アップですからねえ。

この方は「消費税の免税は逆進性の緩和のために必要」というようなことをおっしゃっていたはずですが、なぜ「消費税がなくなる=収入10%アップ」なのか理解できません。免税事業者であれば、消費税がゼロになると益税分の「収入」が減るのでは? それとも、「免税事業者でそもそも消費税を受け取っておらず、支出が消費税分減るので相対的に収入が10%アップ」ということなのでしょうか? 仮にそうだとすると、「収入と支出が同額で利益が出ていない」ということで、そういう事業者があったとしても一般化できる話ではないと思います。

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まとめ

インボイス制度に関して、たまたまツイッターで見掛けた人がおかしな主張をしていただけなのか、インボイス制度に反対の人は皆おかしな主張をしているのかわかりませんが、インボイス制度の何がそんなに悪いのか理解できません。
「免税事業者への課税を強化するのが問題」というのであれば、消費者は消費税を払っているのにそれを懐に入れている方が問題だと僕は思います。

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