尾身茂氏の発言まとめ

尾身茂氏のこれまでの発言をまとめてみます。
なるべく「当時知り得たこと」で批判してみたいと思います。
基本的には尾身氏の発言をまとめたいと思いますが、新型コロナウイルス感染症対策分科会の資料も「尾身氏の考えが反映されているだろう」ということで取り上げます。

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検査関連

発熱が4~5日続いた段階ですぐに医師に相談して「PCR検査」を受ける(2020年2月)

新型コロナ座談会 連鎖断てるか、この1~2週が正念場 - 日本経済新聞
新型コロナウイルス感染が国内で相次ぎ、政府の専門家会議は今後、1~2週間がヤマ場となるとの見解を示した。これまでの政府の対応に問題がなかったのか。収束の見通しはあるのか。会議の委員である尾身茂・地域医療機能推進機構理事長、脇田隆字・国立感染症研究所長、押谷仁・東北大学教授に議論してもらった。司会は論説委員長の原田亮介。...

発症する前に見つけるのは難しい。インフルエンザと違って症状が長引く。発熱が4~5日続いた後に治る人がほとんどだが、悪化する人もいる。この段階ですぐに医師に相談して「PCR検査」を受ける。4日にしたのは、できるだけ早くウイルスを検出でき、トータルで効果が高いからだ。

反論は、和歌山県の仁坂知事の言葉を借りて。

Yahoo!ニュース
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新型コロナのはしりの頃に、尾身さん(政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長)が『4日間、37度5分以上熱が出なければPCR検査をしなくてもいい』と言っていたでしょう。病理学を分かっていない。和歌山県は、『間違ったことを言うな、そんなことまったく聞きません』と言って、いきなりPCR検査をどんどんやりました。早期発見するためには、積極的疫学調査をどんどんやらなければならないのです。その仕掛けを県下中にビシっと作ってあります。

ほとんど感染者のいないポピュレーション(集団)を対象にやると、どんどんと偽陽性が増え、偽陰性が減っていく。これは感染症対策の常識(2020年7月)

無症状者を徹底的に検査すべきか、議論を。 始動した新型コロナ分科会、尾身会長が検査について語ったこと
新型インフルエンザ等対策有識者会議の下に新設された「新型コロナウイルス感染症対策分科会」。そこではどのような議論がなされたのか。尾身茂会長の口から語られたのは、政府に提言した検査体制拡充のための戦略と今後とるべき対策の3つのポイントだ。

PCR検査の感度(陽性を正しく陽性と判断する割合)は70%、特異度(陰性を正しく陰性と判断する割合)は99%とされている。単純計算で100人の検査を行った際には、30人の陽性者を見落とす可能性がある。

「リスクが低いところで、ほとんど感染者のいないポピュレーション(集団)を対象にやると、どんどんと偽陽性が増え、偽陰性が減っていく。これは感染症対策の常識なんです」

仮に1%の人が感染していると思われる1万人に対して検査を行った場合、99人が偽陽性と判定される。この99人は実際には陽性ではないにも関わらず、隔離措置をとられることになる。

また、30人は感染をしているが陰性と判定される可能性がある。この30人は安心して、知らず知らずのうちに感染を拡大する可能性がある。

「PCR検査の感度は70%、特異度は99%」というのは新型コロナウイルス感染症対策分科会の第1回資料(PDF)にも記載されており、表向きは尾身氏もそういう考えということになります。
これに対して、2020年6月から7月に中国・北京で実施されたPCR検査の結果はというと。

北京市、感染再流行を抑制、集中的検査と選択的封鎖が奏功(中国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

北京市の7月3日の発表によると、6月11日以降、1,005万9,000人にPCR検査を実施済みで、陽性率は10万分の3.67だった。

「陽性率は10万分の3.67」です。これが仮に全部「偽陽性」だとしても、特異度は「1引く10万分の3.67」、すなわち99.99633%です。無知なのか意図的に無視したのかはさておき、この結果を見て「特異度は99%」などとは言えないと思いますし、「どんどんと偽陽性が増え、偽陰性が減っていく。これは感染症対策の常識」が本当なのか、本当にそう思っていたのだとしたら尾身氏は時代遅れで「現在の常識」から取り残された人物ではないかと思います。
また、東京都は陽性率が一番低かったのは2020年5月で0.8%というのがありましたが、「特異度は99%」というのを信じていたのだとすると、この頃陽性という結果が出た人はほぼ偽陽性と考えるべきで、検査をやめさせるなどすべきだったと思いますが、尾身氏はそのように動いたのでしょうか? 動いたのであれば「本当に特異度は99%と信じていたのか」とあきれますが、動いていなかったのであれば「本当は特異度は99%とは思っていなかった」ということになると思います。あるいは、「現在はほとんどが偽陽性で隔離される人たちだがそれも仕方ない」と考えていたのか。それとも、専門家会議の一員でありながら東京都の陽性率など全く気にしていなかったか。いずれにしてもひどい話だと思います。

感度70%、特異度99.9%と仮定(2020年7月、新型コロナウイルス感染症対策分科会資料より)

新型コロナウイルス感染症対策分科会 第2回資料(PDF)

人口10万人:0.1%の人が感染、感度70%、特異度99.9%と仮定すると

10日前に「特異度99%」としていたのに「特異度は99.9%」という仮定が出てきました。「PCR検査の特異度がそんなに低いわけがない」と批判されたからでしょうか。変えるなら変えるで、99%が間違いだと思うから99.9%にしたのか、99%は間違っていないと思っているけど例として99.9%を出したのか区別できないので、前と違うことを言うのならきちんと訂正なりすべきと思います。

偽陰性者が無自覚に感染を広げる(2020年7月、新型コロナウイルス感染症対策分科会資料より)

新型コロナウイルス感染症対策分科会 第2回資料(PDF)

偽陰性者が無自覚に感染を広げるリスクを考慮する必要

前で紹介した記事にも「30人は感染をしているが陰性と判定される可能性がある。この30人は安心して、知らず知らずのうちに感染を拡大する可能性がある。」という言葉があります。
「偽陰性者が(陰性という結果をもらって)羽目をはずす」の原型でしょうか。
実際にそういう人もいるのでしょうが、そもそも無症状の感染者は「無自覚に感染を広げる」わけです。例えば「沖縄に旅行に行きたい」という人がいて、「検査を受けずに無症状の人だけ行くのを認める」のと「検査を受け、無症状で陰性と確認された人だけ行くのを認める」のとでどちらが「沖縄にウイルスを持ち込む可能性が高いか」という話です。
「一定数の偽陰性があるから意味がない」という反論も聞こえてきそうですが、「ワクチンを接種しても or マスクをしても感染をゼロにはできないから意味がない」と考える人なんですかね? 「ゼロにはできないとしても減らすことはできる」ということは理解してほしいのですが。

無症状者にPCR検査しても感染は抑えられない(2020年10月)

「無症状者にPCR検査しても感染は抑えられない」と尾身氏
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の尾身茂氏は10月14日、バイオ産業のイベントで基調講演を行った。PCR検査に関して強調したのは、「PCR検査を増やした結果、感染を抑えられたという証拠がない」という点だ。

 PCR検査に関して尾身氏が強調したのは、「PCR検査を増やした結果、感染を抑えられたという証拠がない」という点だ。

中国、台湾、ニュージーランド、オーストラリアなどの例を見れば「PCR検査を増やせば感染を抑えられる可能性がある」と気付きそうなものですが。
「PCR検査の拡充は十分条件ではなく必要条件」ということが理解できないんですかね。

感染リスクの高い地域などを中心に、無症状者に焦点を当てた広範かつ頻回に行う積極的検査をやってもらいたい(2021年2月)

再拡大早期探知へ「攻めの検査でリバウンド防止を」尾身会長
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(会長:尾身茂・地域医療機能推進機構理事長)は2月9日、第24回会合を開き、緊急事態宣言の解除後に求められる対策などについて意見を交わした。尾身会長は会合後の記

尾身会長は会合後の記者会見で「(感染者数増加を)早く探知して、すぐに介入することが、リバウンドを防ぐために非常に重要になる。感染リスクの高い地域などを中心に、無症状者に焦点を当てた広範かつ頻回に行う積極的検査をやってもらいたい」と述べ、「攻めの検査」で再拡大を防ぐ必要があると強調した。
(中略)
 今回、尾身会長は「攻めの検査と言ってもいいが、2aの拡大版だ」として、緊急事態宣言の解除後に感染リスクが高い地域で無症状者に対する検査を「広範かつ頻回に」行うよう提唱。変異株の感染が各地で判明していることもあり、「この重要性が今まで以上に増している」と述べた。分科会として合意を得たという。

 「リスクが高い地域」としては、「各都道府県で、これまでにどこが感染源になったかが分かっているはずだ。リバウンドするときは、またそこで感染する。そういうところの事前確率は高いと考えている」と説明し、繁華街や外国人コミュニティーなどの例を挙げた。

「広範かつ頻回に行う積極的検査をやってもらいたい」と、以前とは少し発言が変わったようですが、「そういうところの事前確率は高いと考えている」と相変わらずの「事前確率」発言。
ですが、「PCR検査を増やした結果、感染を抑えられたという証拠」はなかったのでは? 考えが変わった、あるいは何か「感染を抑えられたという証拠」が新たに出てきたのであればきちんと説明し、以前の発言は訂正すべきと思います。

一部の市民が検査を積極的に受けようとしない(2021年8月)

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尾身会長は「検査の供給体制が間に合っていないことに加えて、一部の市民が、検査を積極的に受けようとしない」と指摘したうえで、実際の感染者数は「報告されているよりも多い」との見解を示した。

「検査の供給体制が間に合っていない」のですから「検査を積極的に受けようとしない」のではなく「受けたくても受けられない状況」だと思うのですが。特に現在の東京は。
「検査の供給体制が間に合っていない」のも、「それほど検査を増やさなくていい」という「検査抑制」の考えがあったせいで、尾身氏に原因の一端はあるでしょうに何を人ごとのように言っているのか。

Yahoo!ニュース
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 政府分科会の尾身会長は実際の感染者数が公表数よりも多いとした理由について、「検査の供給体制が間に合っていない」ことと「無症状者が積極的に検査を受けようとしない」点を挙げました。

前の記事とちょっと文言が違うのですが、「無症状者が積極的に検査を受けようとしない」と言ったのですかね? そうだとしたら、それは「発熱が4~5日続いた段階でPCR検査を受ける」だの「PCR検査の感度は70%、特異度は99%」だの「無症状者にPCR検査しても感染は抑えられない」だのと言ってきた結果では? 少しずつ方向転換してきたようですが、以前の発言が間違っていたなら間違っていたと認めて否定・訂正し、「今後はこうしてください」と言うのが筋だと思います。でも、そんなことしたら「それは当時からわかっていたことでは?」と言われてしまうから以前の発言を訂正できないのですかね?
そもそも、保健所も発熱外来もパンクした状態で「無症状者が(公費での)検査を受ける」ということが可能なのですか?と聞きたいです。症状があるのに検査を受けられないという人すらいるのに。

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移動・旅行関連

一人ひとりの感染予防はもちろん重要だが、もっと合理的な21世紀型の対策があるはず(2020年2月)

新型コロナ座談会 連鎖断てるか、この1~2週が正念場 - 日本経済新聞
新型コロナウイルス感染が国内で相次ぎ、政府の専門家会議は今後、1~2週間がヤマ場となるとの見解を示した。これまでの政府の対応に問題がなかったのか。収束の見通しはあるのか。会議の委員である尾身茂・地域医療機能推進機構理事長、脇田隆字・国立感染症研究所長、押谷仁・東北大学教授に議論してもらった。司会は論説委員長の原田亮介。...

感染拡大を防ぐだけが目的なら、中国と同じことをやればよい。しかし、人々の移動まで止める必要はない。一人ひとりの感染予防はもちろん重要だが、もっと合理的な21世紀型の対策があるはずだ。

その後の政府の対応を見ると「自粛頼み」にしか見えませんが、「もっと合理的な21世紀型の対策」とは何だったのでしょうか? 「強制的な隔離、ロックダウン」ではなく「外出自粛(自主的な行動変容)」が「もっと合理的な21世紀型の対策」なんですかね?

旅行自体が感染を起こすことはない(2020年7月)

404 Not Found | 西日本新聞me
西日本新聞meは、九州のニュースを中心に最新情報を伝えるニュースサイトです。九州・福岡の社会、政治、経済などのニュースを提供します。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は16日、経団連主催の夏季フォーラムで講演し、「Go To トラベル」の実施に賛否が出ている中、「新幹線の中で感染は起きていない。旅行自体が感染を起こすことはない」との認識を示した。

 尾身氏は、これまでに感染が確認されたのは、レストランやホストクラブ、劇場など「3密」(密閉、密集、密接)の場所だと指摘。旅行についても行った先で、3密を避ければ感染リスクは低いとの考えを示した。

仮に「移動時は(おとなしくしていれば)感染リスクは低い」として、旅行先でどういう行動を取るかわからないわけで、そういうのに税金を使うのはどうなのか、という話だと思うのですが。
そもそも、新幹線の中でビールを飲む人もいますし、「旅行自体が感染を起こすことはない」などとは言えないと思います。

旅行者が増えると、滞在先の感染者も増える(2021年7月)

「帰省にブレーキ」「7、8月がヤマ場」尾身会長、感染拡大受け談話 | 西日本新聞me
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は16日、臨時記者会見を開いて談話を公表し、来週からの東京五輪・パラリンピックやお...政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は16日、臨時記者会見を開いて談話を公表し、来週からの東京五輪・パラリンピックやお...

 冒頭、尾身氏が紹介したのは、東京など感染拡大エリアからの人の流れが増えた結果、那覇市の新規感染者が上昇したことを示す棒グラフだった。「旅行者が増えると、滞在先の感染者も増える」と説明し、今夏の帰省やバカンスにぐっとブレーキを踏んだ。

いやいや、「旅行自体が感染を起こすことはない」のでは?と言いたくなりますが。
こういうデータが出てこないと、「旅行者が増えると滞在先の感染者も増える」という可能性を想像すらできないのでしょうか。

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まとめ

検査については「PCR検査の特異度は99%」「(事前確率が低いと)偽陽性量産」「無症状者にPCR検査しても感染は抑えられない」→「無症状者に焦点を当てた広範かつ頻回に行う積極的検査をやってもらいたい」と変遷してきました。でも「積極的検査」も「感染リスクの高い地域などを中心に」と付けて、「そういう地域は事前確率が高いから」としています。じゃあ、「事前確率が高い/低い」の基準はどれくらいなのか、と問いたいです。当初は事前確率が1%や0.1%で「事前確率が低い」という例にしていましたが、現在「事前確率が高い」と考えるのは何%なのか。
そもそも本当に「PCR検査の特異度は99%」と考えていたのか。だとしたら「現実を正しく認識できない(あるいは見ようとしない)人」ですし、「本当はPCR検査の特異度はもっと高いと思ってけど99%と言った」なら「検査をなるべく受けさせない」「検査を受けるのは悪いこと」という方向に導くために意図的にうそをついたということになるのだろうと思います。「間違えたのなら訂正すればいい」とは思いますが、「現実を正しく認識できなかった」もしくは「うそをついていた」ということであれば「分科会会長」などの座にいるべき人物と思えません。
旅行についても、「旅行自体が感染を起こすことはない」→「旅行者が増えると、滞在先の感染者も増える」と主張を変えていますが、当時の「GoTo」を認めるために無理やり擁護したのでは、と思ってしまいます。
「医クラ」の人たちは崇めるようにたたえていましたが、過去はともかく現在の尾身氏が称賛に値する人物とは思えません。

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